腐乳研究会|のびやかな発酵唐辛子の旨み。雲南省・大理巍山小吃節で買った辣腐乳。
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貴州の腐乳を食べると、雲南も忘れちゃいけない思う。
雲南省は貴州省の西の隣。南北に長く、標高差があり、面積は日本の国土(377,975 km²)とほぼ同じ(394,100 km²)。少数民族が多く住む地域であり、言葉も食文化も多彩。
こういうことを知っていくと「中国は…」と決してひとくくりにはできない。
雲南省で思い出深いのは、2019年3月の17時間の寝台バス旅だ。
旅路はモエ・マサラ・私で、雲南最南端のシーサンパンナ(西双版納傣族自治州)から大理市まで。旅は道連れ、途中検問を受けること3回、一緒にいれば17時間などあっというま。
各人、よく眠れるというのが強い。今回ご紹介するのは、その道中で買った腐乳である。
食いしん坊バンザイ!南詔国発祥の城下町・巍山の小吃節
訪れたのは、大理の中心部から南へ約60kmの場所にある巍山彜(イ)族回族自治県。
なぜここに行ったかというと、大理で知り合ったアリちゃんから「明後日、巍山で小吃節(軽食祭り)があるよようです」と教えてもらい、俄然興味を持ったから。
旅の道中に、食の祭とタイミングが合うなんて運がいい。教えてくれたアリちゃんに感謝。そしてアリちゃんを紹介してくれた、在重慶日本国総領事館のMさんに感謝である。
調べてみると、巍山(wēi shān:ぎざん)は唐代に隆盛だったチベット・ビルマ系の国家、南詔国発祥の地。
『世界史の窓』によると「チベット・ビルマ系のロロ族(烏蛮)が、タイ系の白蛮を抑え、738年ごろ、皮羅閣によって建国された」とあり、街を歩くと、暮らしの息吹とともに古城の風格を残していた。
そこで年に1度開催されるのが小吃節。路地に近隣の彜族と回族が各民族に伝わる小吃を屋台を出し、食事処が倍増すると、街は一気に賑やかさを増す。
小吃だけでない。仔豚の丸焼き、羊の丸焼き、鳩の丸焼きもガンガン焼いている。手作りの調味料ブースもあれば、地元のお酒も売っている。
これを話し始めるとキリがないので、詳細はまた別記事に譲るとして、その一角で見つけたのがこの腐乳だ。
見たところ、新鮮な唐辛子を刻んでまぶして漬けているようだ。肉厚な唐辛子の風味が伝わってくるようで、うう、見るからにおいしそう。
その気持ちを後押しするかのように、売り子のおばちゃんが「私が作ったのよ」と声をかけてくる。こうなると弱い。試食し、大きな瓶にひとつ買った。
そして1年後がこれである。
モエ「ああ、これが腐乳って感じ!」
マサラ「そうそう!これが私の基本の腐乳。これだよね~って感じ」
モエ「落ち着く味わい」
2人とも雲南には足繁く通っているので、なるほど、これがホームの味か。
サトタカ「けっこう辛いね。唐辛子の辛味がシャープだよ」
見たところ唐辛子はこなれているが、その味わいはまだヴィヴィッドだ。
あの新鮮な唐辛子が漬け汁の中で発酵しているなら、泡辣椒(pào là jiāo:唐辛子を発酵させた漬物)と一緒で、フルーティーな味わいとなり旨みも増す。
辛いけど、この唐辛子が旨みに寄与しているんだな。
和え麺などに使ってもいいだろうし、チーズにも合いそう。舐めているうちに、巍山小吃節の賑わいが脳裏に蘇った。
恐らくここはすぐに観光開発が進むだろう。あの時、スタバができるって看板があったもんなあ。そう思うと、まだ往年の面影を留めているこの街に、すぐにでも行きたくなった。
この記事の場所
雲南省大理白族自治州 巍山彜族回族自治県
サトタカ(佐藤貴子)
食と旅を中心としたコンテンツ企画、編集、執筆、監修、コーディネートなどを手掛ける。10代でフランス菓子の再現にハマり、20代後半で中華食材の多様性にハマり、30代で中国郷土料理の沼にハマる。中華がわかるウェブマガジン『80C(ハオチー)』ディレクター。中華圏を胃袋目線で旅する『ROUNDTABLE』主宰(当サイト)。東洋医学を胃袋で学ぶ『古月漢満堂』企画など。