貴州の豆豉(とうち:dòu chǐ)は干し納豆である、と先日書いた。日本の納豆や干し納豆と異なるのは、圧倒的に複雑かつ有機的な香り。粘らないのもポイントだ。この特徴は必ずや納豆嫌いを救済するはず。いや、既にしているともいう。

なぜなら京都出身で納豆嫌いの友人は、貴州豆豉の火鍋を食べて「これならいける!」と、煮詰まった鍋汁を白ごはんにかけ、何杯もおかわりしていた。

一緒に貴州を旅した男性2人も「生まれてはじめてくらいに干納豆とはいえ納豆を美味しいと思った」「納豆をうまいと思わない私が、うまいと思えた」と言ってくれた。

冷静に振り返ってみると、貴州豆豉は納豆嫌いに納豆をもりもり食べさせるという、大きなインパクトを残しているかもしれない。

そもそも日本で食べる納豆は、生で食べることが多いので、コクや香りを出すすべがあまりない。また、加熱しても粘りが残りがちで、他の料理にまでネバネバの影響が及んでしまう。ネバネバ嫌いにはつらいところだ。

その点、貴州の豆豉は、大豆のうまみが凝縮され、深いコクがあり、ぬるま湯で戻しても粘らない(重要)。そこで、この特徴を生かしたおすすめのメニューを2つ紹介したい。

納豚汁(なっとん汁|貴州豆豉+豚汁)

2日目の貴州豆豉鍋を豚汁に加えたもの。

味の方向性は納豆+豚汁だ。まず、貴州の干豆豉(がんとうち)を軽くお湯で戻し、水気を切って多めの菜種油で香ばしく炒める。

香りが立って来たら、糍粑辣椒(ツーバーラージャオ)、なければ唐辛子の麹漬けや、食べる辣油的な調味料を鍋に投入。しっかり炒め、醤油を少々加えて味を調えたら、豚汁の上にたっぷりのせよう。

唐辛子を含んだオレンジ色の油がぱーっと豚汁の水面に広がったら召し上がれ。貴州豆豉と加熱した菜種油のコクが豚汁を香ばしく彩り、新たな豚汁体験が味わえる。

ちなみに私の郷里では、ひきわり納豆を味噌汁に入れた「納豆汁」が給食に出ていた。これもサラりとして食べやすいのだが、こちらの方がひと仕事しているだけに疏y区欲をそそる。原料の大豆からにじみ出る豆の旨みも感じられ、しみじみとおいしい。

貴州豆豉ラーメン(貴州豆豉+味噌系ラーメン)

こちらは休みの日の簡単な昼ごはんにぴったりのメニュー。納豚汁に使った材料とほぼ同じだが、香味野菜を加えるのがポイントだ。

まずは貴州の干豆豉を軽くお湯で戻し、水気を切って千切りにした生姜と、叩いたにんにくとともに、多めの菜種油で香ばしく炒める。

途中で糍粑辣椒(ツーバーラージャオ)、なければ食べる辣油的な調味料を入れ、香りが出たら、塩や醤油等で控えめに味を調えたらできあがり。

写真は愛する「中華三昧」シリーズより「麻辣火鍋麺」を使った貴州豆豉ラーメン。個人的にはこの組み合わせが最高だったが、「サッポロ一番 味噌ラーメン」のような、包容力のあるラーメンにもよく合う。

そもそも「サッポロ一番」はアレンジの余地を多く残した、隙のあるラーメンなのでいろんな食べ方ができる。一方「中華三昧」はスープの味がピンポイントでキマっている、隙のないラーメンである。

しかしこの「麻辣火鍋麺」に関しては例外だ。「火鍋」ゆえに、いろんなものを加えて食べる前提で設計されているからだ。なかなか店頭で見かけることがないが、家で1人前の火鍋をやるのに、これをベースにするとだいぶ捗ることをお約束する。

貴陽市内の民生路市場では複数の店舗で干豆豉や豆豉粑を販売している。比較的スーパーよりも市場で販売していることが多いようだ。有名な産地は貴州省西方の大方県。

サトタカ(佐藤貴子)

サトタカ(佐藤貴子)

食と旅を中心としたコンテンツ企画、編集、執筆、監修、コーディネートなどを手掛ける。10代でフランス菓子の再現にハマり、20代後半で中華食材の多様性にハマり、30代で中国郷土料理の沼にハマる。中華がわかるウェブマガジン『80C(ハオチー)』ディレクター。中華圏を胃袋目線で旅する『ROUNDTABLE』主宰(当サイト)。東洋医学を胃袋で学ぶ『古月漢満堂』企画など。