腐乳研究会|豆麹と米麹のいい仕事。味噌・醤油に通じる台湾の腐乳。

自家製腐乳

<腐乳研究会> 九州の腐乳台北の腐乳貴州の腐乳雲南の腐乳


アジア各地から持ち帰った腐乳を食べて語るという「腐乳研究会」。志はないが、好奇心はある。あちこち旅しているから、腐乳もある。それだけで2年間続くものである。

さて、豆腐以上腐乳未満、九州の豆腐の味噌漬けを味わってふと、思い出したのが冷蔵庫の中にある台湾の腐乳だ。

ひとつは人生で初めて自作した腐乳。2018年1月、台北の「Beher食物研究圖書館」で作ったものだ。

熟成の進んだ腐乳は奈良漬に通ず。Beher食物研究圖書館で教わった台湾式腐乳(熟成2年)

腐乳づくりを教わった「Beher食物研究圖書館」は、かつて映像関係の仕事に就いていたBeherが発酵を学び、独立して開いた会員制の施設。

発酵に関する書籍を世界中から集めた私設図書館に、工房兼教室が併設されており、季節ごとにさまざまな発酵食品が作って学べる連続講座が開かれている。

Beher食物研究圖書館。工房に、お座敷スペースもある。

紹介してくれた友人曰く、台湾の料理人や研究者も通っているそう。過日、彼女の計らいで、単発講座として教わったのが、こちらの台湾式の腐乳だ。配合はBeher自身が試作を重ねたオリジナルである。

自家製腐乳
Beher食物研究圖書館で教わった台湾式の腐乳。

台湾の腐乳は基本的に麹で漬ける。ここでは米麹、豆麹、塩水をベースにしていた。麦と米の割合は、好みで調整してもいい。

自家製腐乳
豆腐はオーブンで水分を抜く。

ユニークなのは、生のパイナップルを少量入れていたこと。パイナップルに含まれる酵素と糖分で発酵のスターターにするのだ。南方の台湾らしくてよいなあ。

自家製腐乳
瓶の口まで空気が入らないよう塩水で満たし、半年寝かせる。

で、この腐乳。「漬けてから半年くらいで食べられるよ」と言われていた。

しかし、半年後開けて食べるも、その時はちょっと物足りない印象。以後ちょっとずつつまみながら、気づけば2年。

初めて自分で作った腐乳はかわいくて、もったいなくて、なかなか消費できなかったというのもある。そんな愛しの腐乳を久々に開けてみると…。

自家製腐乳
自家製腐乳。半年熟成でよかったが、気づけば2年以上経っていた。

マサラ「けっこう酒の感じがあるね。何か入れてない?」
サトタカ「そうだったかな…、あ、台湾の米酒を入れた!24度くらいだったかな」
モエ「たしかに酒っぽい。香りがいいね」

思えば、最初に開けた時より豆腐の色がかなり深まっているようだ。そういえば、漬けて半年はこんなに馥郁たる酒の香りはなかったかもなあ。

そこで当時の講座のメモを引っ張り出してみると、こうあった。

「腐乳を試食させてもらったが、麹を使っていることもあり、味噌に近いフォワグラのようだ」

むむ、なんか違うぞ。一緒に漬けたパイナップルは、すっかり琥珀色に染まっている。瓶の中から引き出してみ口にすると、これまた芳醇な酒の香り。そこで気づいた。これは奈良漬の味だ。

そう思うと、酒粕で豆腐をつけてもかなりおいしそうな気がしてきた。なんならこの漬け汁も贅沢に麹類が入っているので、中の豆腐を食べ切った後、もう一度違うものを漬けられそうではある。

水分の多い野菜より、ヤーコン(菊芋)のようなシャキシャキしたものや、生姜なんかも合いそうだ。軽く加熱して、牛肉のタレにもよさそう。

もはや〈豆腐のフォワグラ〉だった時代の片鱗もないが、熟成が進めば進むで、新たな使い道もある。

醤油×カラメル感。GREEN & SAFEの「安心豆腐乳」

台湾でオーガニック食品を扱う店、もといブランドのひとつに「GREEN & SAFE」がある。

生鮮品はもちろん、独自に企画・製造した豆豉や揚げ葱、青草茶や八宝粥なども取り扱っており、デザインもいい感じ。食に関心の高い方なら、爆買いしてしまう人もいるだろう。

私が初めてこの店を訪れたのは、上海・東平路にある路面店だった。

つまり、台湾のみならず大陸にもある。そこでは、台湾および中国、世界から選りすぐった食品が並び、おいしいクロワッサンとコーヒーで朝食も楽しめる。まあ、洗練されてるんですね。

GREEN & SAFE
上海・東平路にある「GREEN & SAFE」徐匯店。近くに泊まったら、足を延ばす場所のひとつだ。

そんな「GREEN & SAFE」でもオリジナルの腐乳が売っている。

その名も「安心豆腐乳」。非遺伝子組み換えでない、厳選された大豆から豆腐を作り、表面を乾燥させた後、塩と発酵のもととなる食材を入れて熟成させている。

安心豆腐腐
台湾「GREEEN & SAFE」の「安心豆腐腐」。

裏面の成分表示を見ると、大豆、水、胚芽米、糖、塩、米酒、硫酸カルシウム、消泡剤(豆腐に使用)とある。つまりBeher式同様、豆麹、米麹、台湾米酒が入っていると認識していいだろう。さっそく口にしてみる。

安心豆腐乳
安心豆腐乳

サトタカ「ずばり醤油味」
モエ「ほんとだ~。醤油」
マサラ「コクがあるね」

見た感じ、キャラメルの色である。そのせいか、醤油にキャラメルを加えたような、引き締まった甘味がある。ただ、醤油ほどはしょっぱくない。軽さもある。

思えば、色は味と通じるものだ。シニアソムリエの友人が「料理に相性のいいワインを選ぶなら、料理の色とワインの色を合わせるのが最もわかりやすく失敗がないんだよ」と言っていたのを思い出した。

これなら、醤油の代わりに使ってもいいかもしれない。そう思い、塩味の餡の肉まんに、コクを足すため少量をつけてみたら、うん、よく合う。そもそも腐乳は肉や野菜と相性がいい。どっちも入った肉まんならぴったりだ。

大珍食品の肉まん
横浜「大珍食品」の肉まん。塩味タイプであっさり系。

まとめると、2つの台湾腐乳の風味は異なるものの、どこか味噌や醤油を感じさせるのが共通項。いずれも麹をふんだんに使っているからか、熟成が進むとさらに味噌や醤油に近づいていくようだ。

それにしても、今回の2瓶は、少し寝かせ過ぎた。

かわいいからといって、目だけで愛で、大事にし過ぎていると、本当の食べごろを逃してしまうこともある。いいものこそ「好みだ!」と思ったところで一気に食べ切る方が、お互いに幸せであり、実りもあるのかもしれない。

そこで、満を持して冷蔵庫から出したくなったのが、貴州と雲南の腐乳である。

なんといってもここ数年、我々が最も食べている腐乳といえばこの2地域のもの。大陸、しかも中国西南地方に飛ぶと、腐乳の風味はまたガラリと変わる。

腐乳研究会、貴州編に続きます。

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この記事の場所

台湾台北市

 

サトタカ(佐藤貴子)

食と旅を中心としたコンテンツ企画、編集、執筆、監修、コーディネートなどを手掛ける。10代でフランス菓子の再現にハマり、20代後半で中華食材の多様性にハマり、30代で中国郷土料理の沼にハマる。中華がわかるウェブマガジン『80C(ハオチー)』ディレクター。中華圏を胃袋目線で旅する『ROUNDTABLE』主宰(当サイト)。東洋医学を胃袋で学ぶ『古月漢満堂』企画など。