ぴゅるぴゅるつるん!貴州の朝ごはんは米粉(ミーフェン)からはじめよう

「南方人吃米北方人吃面(南の人は米を食べ、北の人は麺を食べる)」という通説のとおり、中国では地域によって主食が異なる。

とりわけ、米食文化の中国西南地方で必ず目にするのがライスヌードル。その土地によって呼び名が変わるが、貴州省では米粉(mǐfěn|ミーフェン)と呼ばれる。

羊肉粉。見るからにつるんとして色っぽい。
こちらは酸湯牛肉粉。米のとぎ汁を発酵させた酸湯に、トマトの発酵だれをかけたダブル発酵スープに牛肉をトッピング。

これらは貴州省では定番の朝ごはん。朝の光を受けて、半透明の米粉がスープにたゆたい、湯気とともに輝く一杯のなんと美しく清々しいこと。写真を見ただけで、舌から喉へぴゅるぴゅるつるん!と滑る食感を思い出し、たまらない気持ちになる。

貴州の朝は、一杯の米粉で始めよう。

米粉は具やスープ、薬味の違いに加えて、貴州省内でも地域性があるため、短期の旅行なら毎朝これでもいいくらい。実際、毎日食べても飽きないほどバリエーションがあるし、各店で味変要素も欠かさない。


いつもの朝の風景。

牛肉粉の店は、少し郊外にいくと、店頭に牛肉を吊るしている店も少なくない。

米粉のバリエーション。

そんな貴州の米粉は、大きく分けて2タイプある。まずひとつは細粉(xì fěn|シーフェン)。これは冷麦やスパゲッティのように断面の丸いタイプで、直径1mm~1.5mmくらい。店によって太さを選べるところもある。体感的に、羊肉粉の店は細粉を使っているところが多いようだ。

断面の丸い米粉。太さはさまざまだが、冷麦よりちょっと太いのをよく見るかもしれない。
断面の丸い米粉。太さはさまざまだが、冷麦よりちょっと太いのをよく見るかもしれない。

そしてもうひとつ、断面が平べったいものを寛粉(kuān fěn|クァンフェン)という。地域や店にもよるが、幅6mm~7mmくらいだろうか。市場では、注文が入るとその場でカットしてくれるところもあるし、スープのベースになる紅酸(発酵トマト)と合わせて売っているところもある。

できたて切りたての米粉。貴州省都匀市の市場にて撮影。

飲食店でどちらを選ぶかは好みだが、どちらを選んでも心配ない。どちらにせよ、作りたてのつやつやを、ぴゅるぴゅるとすすり食べる快感が待っている。もちろん、特に指定せずに店の定番を食べるのもいいものだ。

さらに地域によっては、酸粉(suān fěn|スゥァンフェン)というものも用意されている。

これは生の米粉を軽く発酵させたもの。貴州出身の友人曰く「ほのかな酸味がたまらない」とか。どこでも見かけるものではないが、貴陽市内だと、牛肉粉の店は酸粉を使っていることがある。さすがは発酵天国の貴州省だ。

貴州省都匀市の市場にて。できたての米粉をお客さんの注文に応じて切っている。

「粉」=「米粉の麺」。薬味コーナーで自分好みにカスタマイズ!

では、米粉を食べたくなったらどうすればいいか。これは非常にわかりやすい。街を散策して「〇〇粉」や「〇〇粉館」などと書いてある店に入ろう。たぶん街中ならすぐ見つかる。「粉」には「米粉の麺」という意味があるのだ。

例えば看板に「羊肉粉」とあれば羊のスープに羊肉が入った米粉で、「牛肉粉」なら牛のスープに牛肉入り。「酸湯」なら発酵させたスープを使っている…という具合。店頭で注文した米粉は、厨房の前で受け取るスタイルが一般的。どの店も漬けものを1~2品は用意しているので、小皿に取り分けて米粉ができあがるのを待とう。

漬物も、店によって個性がある。左は青唐辛子と恐らく紅葱頭(ホムデン)、右はキャベツ。セルフサービスなので、席についたらまず小皿に取り分けてスタンバイしておこう。

また、薬味としてフレッシュハーブをてんこ盛りに用意している店はテンションが上がる。2018年、2019年と2年続けて訪れた、黔東南の酸湯牛肉粉(発酵スープと牛肉のライスヌードル)の店がそうだった。

ここでは狗肉香(アップルミント:貴州省の方言)、折耳根(ドクダミの根:主に西南地方の方言)、香菜、葱、青菜や大根などの漬物、揚げピーナッツ、黒酢、花椒粉、煳辣椒面(焙煎唐辛子粉)などが所狭しと並べられ、のせないと損!と思えるほど。

薬味控えめ。発酵トマトの赤が食欲を刺激する、酸湯牛肉粉。
現地の人を見ていると、それぞれ好みがあるようだ。

最初はスープそのままの味を味わうのもいいが、こういうときはのせるが勝ち。薬味コーナーの上にあるものこそ、現地の個性ある食材であり、味覚の領域を広げるものだからだ。

羊肉、牛肉、ガチョウ、酸湯、汁なし、汁あり、具なしまで!

米粉の店はそれぞれ専門化されているのも楽しい。主だったところでは、羊肉、牛肉、ガチョウ肉、酸湯(米のとぎ汁やトマトなどを発酵させたスープ)などだろうか。小吃(軽食)の店では、素粉と呼ばれる具なしバージョンもある。

発酵させたスープ「酸湯」と牛肉の米粉専門店。好みで牛肉の量を増やせる。
ガチョウ肉入り米粉。ガチョウの血を固めたものものっている。薬味はなんと生にんにく。別売で、手羽などの煮込みも売っている。
貴陽市内の羊肉粉の人気店。あっさりスープが朝にぴったり。調味料は油辣椒(食べる辣油的なもの)、糊辣椒(焙煎唐辛子粉)、花椒面の3種類。

また、同じ料理名だからといって同じ見た目と味かというと、貴州省内でも地域性がある。

思い出深いのは2019年の秋、北方の遵義(じゅんぎ)で食べた羊肉粉だ。これが他のどの地域とも異なる太麺仕様。もっちりとしたうどんのような食感で、噛むたびにじゅわりと旨みが染み出るような羊肉の滋味深さに、思わず目を見開いた。

唐辛子が名物の土地ではあるが、案内してくれた友人のお兄さん曰く「あまり唐辛子を入れない方が好きだ」とか。

地元の方におすすめされて「羊肉粉なんてどこにでもあるよなあ」と思ったが、食べて納得。「遵義にきたら絶対食べて!」と言ってくれた理由がこの一食で腑に落ちてしまった。

中国西南地方から南方にかけての米粉。

地域ごとにいろんな郷土麺があるように、米粉もまた地域性がある。雲南省の省都・昆明市では過橋米線(かきょうべいせん)が名物だし、南方の西双版納ではピーナッツをペースト状にした花生米線、大豆をペーストにした豆湯米線は目から鱗の濃厚な味わいだった。

さらに東に向かうと、江西チワン族自治区では桂林米粉(けいりんびーふん)があり、広東省は焼きそばなどにする河粉や、点心舗で出される陳村粉が充実。福建省は細身の福建米粉(ふっけんびーふん)が有名で、湖南省、湖北省、江西省の米どころ三省も米粉は日常食。こうした「粉」もおいおい紹介していければと思う。

日本の関東地方で生まれ育った身としては、蕎麦やうどんは麺はコシがあるほうが好みだが、米の粉でつくるこれらはベツモノ。朝、おいしい米粉にありつければ、幸先のいい1日のはじまりだ。

変更・加筆:2020年7月20日
※日本語読みのふりがなはひらがな、中国語読みのフリガナはカタカナにしています。

サトタカ(佐藤貴子)

サトタカ(佐藤貴子)

食と旅を中心としたエディター、ライター、コーディネーター。卒業後に携わった映像関連の仕事で、担当した映画監督が大の中華好きだった影響を受けて中華にハマる。独立後、中華食材専門商社のECサイト立ち上げと運営を通じて中華食材に精通。食をテーマにしたイベントの企画・運営や、雑誌、会報誌、ウェブ等で中華に関する執筆多数。中華がわかるウェブマガジン『80C(ハオチー)』ディレクター。東洋医学を胃袋で学ぶ「古月漢満堂』企画雑用係。